日本シリーズ:ロッテが阪神に先勝 7回濃霧コールドで


プロ野球の日本シリーズは22日、千葉マリンスタジアムで開幕。31年ぶり日本一を目指すロッテ、20年ぶり頂点を狙う阪神が対決し、第1戦はシリーズ史上初めて濃霧による七回途中コールドでロッテが10−1で先勝した。日本シリーズで天候を理由にコールド試合になったのは53年(雨天)以来52年ぶり2度目。ロッテは今江の史上13人目のシリーズ初打席初本塁打で先手を取り、中盤の集中攻撃で阪神先発・井川を攻略。阪神は五回に藤本の犠飛で同点としたが、先発全員安打のロッテの勢いにのまれた。

第2戦は同球場で午後6時15分開始。先発はロッテが渡辺俊阪神が安藤と予告された。

 〇ロッテ10−1阪神

ロッテが4本塁打を含む15安打で七回途中までに10点を奪い、濃霧によるコールドゲームで大勝した。一回、今江のシリーズ1号ソロで先制。同点にされた直後の五回、今江の右越え二塁打とサブローの左越え適時2点二塁打で3点勝ち越し。七回には2本塁打で決定的な5点を加えた。先発の清水は七回まで1失点に抑える好投。阪神の井川は勝負球が甘くなり失点を重ね、リリーフの橋本も持ちこたえられなかった。

 ▽ロッテ・バレンタイン監督 (プレーオフの)ソフトバンク戦では好投手を打ち切れなかったが、いったん火がついたら、活発に打ってくれた。(初戦を勝った意味は?)うちはあと3勝で、向こうはあと4勝が必要、ということだ。

 ▽阪神・岡田監督 実戦から離れているブランク? 最初のストライクに手が出ん。見送りが多かったし、タイミングも合っていない。どうしようもないゲームやった。切り替えて、明日は何とか先制できるようにしたい。

 ▽ロッテ・清水 緊張したが、お客さんが入って勇気に変わった。一球一球集中して、しっかり投げられた。まだ一つ取っただけ。気を緩めず甲子園で決めてきます。

 ▽阪神・橋本 (七回に登板し5失点)結果は結果で仕方ないけど、取り返せないことをした。霧の影響? 相手も一緒だから……。

 ◇今江、試合の流れも決める効果的な一振り

初の大舞台にも臆せず、バットを振り抜いた。同点にされた直後の五回無死一、二塁。ロッテベンチは打席の2番・今江にバントのサインを送った。しかし、今江が初球のボールを見送ると、「打て」のサインに変わった。

ミスターロッテ」と呼ばれた有藤通世さんがつけていた背番号8を今季から受け継いだ22歳。首位打者争いに加わるなど、リーグ優勝の原動力にもなった若武者はサインにうなづいた。

 疲れの見えた阪神のエース井川の直球を振り抜くと、打球は右翼フェンスを直撃。適時二塁打となり、貴重な勝ち越し点を挙げた。「右に狙ったわけではないが、いい方向に、いい打球が飛んでくれた」と今江。試合の流れも決める効果的な一振りだった。

一回には先制となる日本シリーズ初打席初本塁打を、阪神ファンで埋まる左翼スタンドに叩き込んだ。そして、三回には三塁線に絶妙なセーフティーバント。ヘッドスライディングで内野安打とし、チームの勢いを加速させた。

右に左に打ち分けて、小技も決めた。「最高の結果が出て、本当にうれしい。千葉では絶対負けられない」。新ミスターロッテの活躍が阪神の出はなをくじく、貴重な白星をもたらした。

 ◇井川、2年前の汚名返上を期したが…

まるでビデオテープを再生しているかのようだった。阪神・井川が5失点でKOされた。シーズン中、何度もさらして来たエースらしからぬ投球。2年前の汚名返上を期した大舞台のマウンドで、再び屈辱にまみれた。

制球が乱れた。一回、今江に打たれた先制ソロは、変化球が高めに抜けた。その後は、毎回走者を許しながらも無失点を続けていた。その粘りが途切れたのが、味方打線が同点に追い付いてくれた直後の五回だった。

先頭・渡辺正に安打を許し、次打者に意表を突かれるバント安打を決められると、もう持ちこたえられない。今江の適時二塁打は高め直球。1死後にサブローに打たれた2点二塁打は真ん中よりのチェンジアップ。前の2打席では変化球に手も足もでなかったサブローに簡単に打たれた。

シーズン終了後、休日返上の練習の取り組み、背中が三塁側に反る癖などを修正。変化球を生かす強い直球を投げられるようにしていた。

後半戦は急追して来た中日戦で1度も勝てないなど、ぴりっとしなかった井川。そんなエースを岡田監督は「1年の総決算だから当然」と開幕投手に指名。選手を信じて使い続ける指揮官の期待にも背を向けた。

2年前のダイエーとのシリーズでは2試合に先発したが、両試合とも不本意な投球に終わった。自らの左腕でモヤモヤを吹っ切ろうとした井川の思いは、またも空回りした。

 ◇バレンタイン監督、こだわるところには徹底的に

バレンタイン監督は頑固だ。試合ごとに打順を替えたり、融通無碍(むげ)な攻撃作戦をとるのがボビー流といわれるが、一方で、こだわるところには徹底的にこだわる。

五回の攻撃が典型的だ。無死一、二塁。ソフトバンクとのプレーオフ第2シリーズで同じ状況は4度あって、すべて強攻策。裏目に出て批判を受けたこともあった。追いつかれた直後だけに、送りバントが常識的だが、今度も今江に強打を命じ、成功した。

サブローの4番もそうだ。プレーオフの後半3試合、サブローの打撃はさんざん。試合前の打撃練習でさえ、安打性の打球が飛ばないくらい、不振にあえいでいた。それでも4番を替えなかった。

この日も2打席目までは、引っ張り一辺倒の余裕のないスイングだった。ところが五回の1死二、三塁では、井川の低めの難しい球を2点二塁打。「いつかは打てる」という監督の期待に、重要な場面で応えた。

ボビー・マジックと言ってしまえば、あるいは単なる幸運と言ってしまえば、それまで。だが、今江は「打て」のサインに、少なくとも二塁走者を三塁に進めようと右に狙った。サブローもつなぐ4番に戻ったことで難しい球に対応できた。

バレンタイン監督はシーズンを通して選手に「つなぎの意識」を徹底してきた。頑固さには根拠がある。

 ○…苦しみ抜いていたロッテの4番・サブローがやっと結果を出した。五回に1点を勝ち越し、なおも1死二、三塁の第3打席で、井川のチェンジアップを左翼フェンス直撃の2点二塁打ソフトバンクとのプレーオフ第2ステージ第2戦以来の安打に、「チームに迷惑をかけてしまった。久しぶりのヒットにほっとした」。二塁上では何度も手をたたいて喜んだサブロー。その姿はこれまでの苦悩の大きさを表していた。

 ○…ロッテ先発の清水が阪神打線を5安打1失点に抑える好投。一回は先頭の赤星に四球を与えるなどして1死一、二塁のピンチ。「緊張気味で腕が振れない感じだった」と清水。しかし、金本を遊ゴロ併殺打に仕留めて波に乗った。「ストレートがよかった。伸びもよく、切れていた」と捕手の里崎。金本、今岡を無安打に抑え込み、相手打線の流れを断ち切った。要所で直球勝負を挑んだ清水は「真っすぐで(これまでも)勝ってきたし、打たれるなら真っすぐだと思っていた」。

 ○…ロッテの西岡がセンスのよさを感じさせるバント安打で、好機を演出した。五回無死一塁で、2球目をセーフティーバント。これが前進してきた投手・井川と一塁・シーツの間を抜ける絶妙の一打となり、結局は3点を勝ち越す攻撃の足場を作った。試合前に「バンバン走りますよ」と話していた今季のパの盗塁王。だが、三回に四球で出塁し、即座に盗塁を狙ったが、あえなく二塁タッチアウト。だが、直後の打席で渋い活躍を見せ、存在感を示した。

 ○…プレーオフ第2ステージで打率1割台だったロッテのサブローと李承ヨプが復活した。サブローは五回に15打席ぶりの安打となる2点二塁打。「体が自然と反応した。自分の悪い流れは変えられたと思う」と手応えをつかんだ様子。李は六回にソロ本塁打。「調子は悪くなかったから」とスライダーを右翼席へ。だが、井川の先発にスタメン落ちと思い、韓国から父の来日を見合わせた李。「それだけが心残り」と快音にも少しさびしげだった。

 ○…阪神の矢野が好守で存在感を示した。三回、パ盗塁王(41盗塁)を誇るロッテの西岡が試みた二盗を、矢のようなスローイングで刺してみせた。初戦で盗塁を許せば、2戦目以降も調子に乗せてしまう。それだけに「最初に刺せたのは大きい」と振り返った。打撃でもみせた。五回、1死一塁からこの日2本目の安打を放ち、続く藤本の同点犠飛を呼び込んだ。ただ、リードした井川、橋本が4本塁打を含む15安打を浴びた。「ロッテはここという時の勢いがすごい。第2戦で頑張って、早く投手を開き直らせたいし、自分自身もさっぱりしたい」と巻き返しを誓っていた。

 ○…初回に先制を許し、追いかける阪神は五回に藤本が同点犠飛を放った。1死一、三塁から低めのフォークをタイミング良くすくい上げた。打球は浅い左飛だったが、三塁から檜山が猛然と突っ込み、タッチをかいくぐった。藤本は「普通だったらただのレフトフライ。檜山さんの走塁のおかげ。何とかしたいという気持ちで打ちました」。ペナントレースでは2割4分9厘と満足な数字を残せなかったが、シリーズで意地を見せた。

 〇…阪神打線のブレーキになった金本は「今日は甘い球ばっかりやった……」と打ち損じを悔しがった。一回は1死一、二塁の場面で外の変化球を引っかけて遊ゴロ併殺に。1死二塁で回って来た六回も三ゴロに倒れるなど、3打数無安打に終わった。2年前の日本シリーズではサヨナラアーチを含む4本塁打と大舞台に強い4番は、「何とかせなあかん」と名誉ばん回を誓っていた。

 ○…スタンドからは韓国シリーズを制し、アジアシリーズ(11月10日開幕、東京ドーム)に韓国代表で出場するサムスンのコーチら5人が偵察のため観戦した。サムスンは03年までロッテの李が在籍し、現在は元中日の宣銅烈が監督を務め、19日に3年ぶり3度目の優勝を決めた。金平鎬外野守備走塁コーチは、阪神とロッテの印象について「阪神は井川をはじめ投手陣が良い。ロッテはやはり李」。来月のアジアシリーズに向けては「休養も十分だし、時間もある。(優勝の)自信はある」と強気だった。コーチらは日本シリーズ全試合を視察する予定。

 ○…開幕ゲームが濃霧による史上初のコールド試合になったが、両監督は平静に受け止めていた。大量リードの場面でコールド試合を宣告されたロッテ・バレンタイン監督は「雪やら雨やら、マイナーリーグでは砂嵐で試合が途中で終わったことがあったが、霧というのは初めてだ」と目を丸くしていた。一方、大差をつけられて敗色濃厚だった阪神・岡田監督も「(濃霧)そら、しゃうがない。終わり方はすっきりせんかったけどな」と納得顔。それでも試合勘が鈍っている選手に配慮して「最後までやって、みんなもう一回ぐらい、打席に立てればよかったが」と少しでも収穫をつかみたかった様子だった。

 ◇第2戦見どころ=阪神は金本、今岡の中軸の復調がカギ 

ロッテは渡辺俊(15勝4敗)、阪神は安藤(11勝5敗)が先発。阪神は中盤までにリードを奪って強力な中継ぎ、抑え投手につなぐ勝ちパターンで第1戦の嫌な流れを断ち切りたい。渡辺は正確無比の制球を武器に防御率2点台と安定しており、阪神交流戦でも手こずった。渡辺が調子づく前の序盤に攻略の糸口を見出せるか。初戦でともに無安打に終わった金本、今岡の中軸の復調がカギを握る。

 ▽1試合個人最多安打 今江(ロッテ)4=04年第2戦の井端(中日)以来22回目▽初打席初本塁打 今江(ロッテ)=13人目。

やったー、まずは先勝できてよかったですね☆
清水直行プレーオフさながらの最少失点で阪神打線を抑えたから本当によかった!
明日は我らがサブマリン・渡辺俊介が先発か…こりゃ勝ったなw
(* ̄▽ ̄)ノ